イモレと呼んで、

夫と息子とわたしのつまらなく幸せな日常。

恋人が走るのを、伸びすぎた前髪が邪魔をしていた。





本日、恋人は会社行事の遊びへ出掛けて行った。
家を出て、少したったら携帯が鳴った。
いつもはかかってこない、恋人からの電話。
何かと思えば「財布を忘れたからマンションの下まで持ってきて」と。
「はいはい」と二つ返事で持って下りた。
まだ下にはいなかったから、わたしは駅へ向かって歩いた。
一つ目の角を曲がると、小走りの恋人が見えた。
笑いながらこっちへ向かってくる。
二人とも間抜けな顔で笑い合い、黒い財布を渡した。
そして、再度別れるときに思った。
わたしは恋人の特別なんだ、と。
そう思った。


嬉しかったことが一つ。
うちはオートロックなので鍵を持って下りないといけないのです。
それを何度も「鍵持って来なよ」「鍵ちゃんと持ってきた?」と。
心配してくれた。